まず、ソナベルトのあちらこちらにある魔族のための神殿を、巡ることにした。
人間の精。
特に、祈りというものは、魔族に穏やかな力を与えるというから。
だから、すべての神殿で祈りを捧げたら、海を越えようと思う。
王宮の地下深くにある『鏡の間』は、封印された。
ミリードの秘法『鏡の封印』が発動したわけではなくて、二度と発動されることのないように、固く扉は閉じられたんだ。
白い髭の魔法使いの爺さんは、いつも寝癖がついているけれど有能な弟子を、みっちり鍛えて百まで生きたら、金の光が踊る赤い世界に飛び込む、ってキラキラした瞳で言うから。
その弟子のほうも、いいっスよ、なんて晴々と笑って言うから。
それに、魔法使いふたりの寿命が終わるそのとき、また現われてやる、とリューはひどく綺麗に笑うから。
リューと魔法使いのあいだに、約束ができたから。
その約束事のために、周囲の国々に充分対抗できるほどの魔法力が集まるよう、ミリードには流れがつくられたらしい。
これからミリードには、多くの力ある魔法使いたちが自然と引き寄せられてやってくるし、生まれてくるんだって。
『鏡の封印』は、不要のものとなったんだって。
たぶん、ね。
三人とも、言葉にはしなかったけど、こういう約束にしよう、こういう約束になるだろう、ってわかってたんだと思うんだ。
オレにそれがわかったのは、その約束が結ばれたあとだったけど。
三人が三人とも、オレことをちゃんと考えてくれてたんだな、って改めてわかって、ほんとに嬉しかったんだ。
だから、
赤い飛膜と、金の羽毛の翼の、
力強くて優しい魔王の、背に乗って。
世界を飛び回り、そこに散らばるいろんなものをこの薄紅色の瞳にひとつずつ焼き付けながら、みんなで贈ってくれた自分だけの未来を、生きていこうと思う。
そうして、いつか。
自分のことを好きになれば良い。
時間はまだまだたっぷりある。
だから、ゆっくり好きになれば良い。
でも、いつか。
絶対に好きになると思う。
いまでも、好きだと言ってくれる友だちがいるんだ。
大切に思ってくれる友だちがいるんだ。
絶対に、自分のことを好きになるよ。
自信はね、あるんだ。
支えてくれる、強い人たちが故郷にいて、
誰よりも欲張りで、誰よりも大切な友だちが、そばにいてくれるから。