夢よ、夢よ。
 わたしの悪夢。
 わたしの悪夢よ、闇に咲け。
 
 
 がたついて割れては浮く黒と白のタイルの上に、融け崩れた蝋燭。
 暗闇に頼りなく揺れる灯りは、いま、その蝋燭ただひとつだった。
 こそこそと囁き合うかのような音を立てて、あまりにちいさな炎が揺れる。
 引き裂かれた天鵞絨の布を引き、邪魔、と後ろへと放った。
 折れ砕けた椅子の足を除け、表面が鋭く抉れた卓を脇へとずらす。
「……めんどくさい」
 幼い声音で抑揚なくその口癖を呟くも、
 
 探すその手は、止めなかった。
 
 
 
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イラスト 鏡花 様
  
   
 
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